大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(う)1574号 判決

被告人 長沢政造

〔抄 録〕

所論に鑑み検討するに、原判決は、「罪となるべき事実」欄において、「被告人は、昭和四八年一一月二七日午後〇時一五分ころ、業務として普通乗用自動車を運転し、東京都北区赤羽北二丁目七番七号先の信号機により交通整理の行われている交差点を、南方から北方浮間方面に向かい直進するにあたり、対面する信号機の信号表示に注意し、これに従うべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、同交差点手前約二〇メートル付近において対面する信号機がすでに黄色の燈火信号を示しているのにこれを看過し、漫然時速約二五キロメートルで同交差点に進入した過失により、折柄右方道路(岩渕方面)から青色燈火信号に従い自動二輪車(原二)を運転して同交差点に進入してきた吉田喜玖志(当時六一年)に自車を衝突させ、よって同人に対し、加療約七か月間を要する左膝挫傷、左下腿挫創等の傷害(なお、その後も気候、季節により左膝部に疼痛を生ずることがある。)を負わせたものである」との事実を認定判示している。

これによれば、被告人車が本件交差点の手前約二〇メートル付近を進行中、対面信号機はすでに黄色の燈火信号を表示しており、被告人はこれを注視し、これに従い交差点の手前の停止位置に停車すべきであったのに停車しなかったというのであるが、たとえ被告人車が右の信号に従い停止位置に一旦停止したとしても、その後赤色信号を無視して発進し、交差点に進入すれば矢張り本件被害車両に衝突する可能性があるといわなければならない。また、被告人車は当時時速約二五キロメートルで進行していたというのであるが、その制動距離は、約七メートル(空走時間を〇・五秒としたとき)ないし一〇メートル(同一秒としたとき)であるから、たとえ交差点の手前約二〇メートル付近において信号を看過して漫然進行したとしても、その後交差点の手前右七メートルないし一〇メートルの地点までに赤色信号に変ったことに気付き、これに従って停車し、本件交差点への進入を回避すれば、事故を未然に防止することができたといわねばならない(原判決は、「争点に対する判断」二項で、被告人車の対面信号は本件衝突地点の手前一七メートル余りで赤色に変った旨認定判示している)。以上の諸点に鑑みれば、被告人が、原判示の注意義務を尽くしたのみでは本件事故を防止することはできず、かつ、これを尽くさなくとも、その後別の注意義務を尽くせば、本件事故を防止することができたものといわねばならないから、原判決は、本件事故の原因たるべき被告人の過失を判示せず、判文上からも、本件事故と因果関係の定かでない事実を罪となるべき事実として認定し、刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号を適用して被告人を処断したもので、理由不備の違法があるといわねばならないから、論旨は理由がある。

(木梨 時國 奥村)

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